発達障がいとトラウマ

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・はじめに

発達障がいが教育界や医療分野で認知されるようになってまだ15年〜20年しか経っていません。今日でもまだ教育現場では発達障がいの子どもへの支援については徹底されておらず、地域間や個々の教員間で温度差や理解の隔たりがあります。私がスクールカウンセラーでいろんな学校を回っていた数年前にも、親身になって熱心に発達障がいの子どもの支援に当たっている先生に対して、理解のない先生から心ない一言を浴びせられ、子どもと同様に傷ついている熱心な先生を職員室で見かけたこともあります。

・集団行動における問題

発達障がいのある子どもは、能力のバランスの悪さから他の子どもたちといっしょに集団行動を行う際に、思わぬことが他の子と同様にはできなくて、本人も周囲も困ってしまう場面に遭遇します。結果として集団の足を引っ張るやっかい者扱いされることがあります。そういう場面でさりげない手助けをしてくれて素敵なサポートをしてくれる先生もおられます。しかし何のサポートも入れてもらえないと、子どもの集団というのは残酷なもので、往往にしてこの種の子どもへのバッシングが起こります。こうした出来事が何回も繰り返すうちに、発達障害のある子どもには「私は役に立たない」「私はダメ人間だ」「私は要らない」という否定的な自己認知が刷り込まれ、自己評価の低さや自尊感情の低さといった問題が作られていきます。

・特有の過敏性によるトラウマ

大多数の子どもにとっては大したことではなくても、発達障がいのある子どもにとっては深刻なトラウマ的な体験になることがあります。発達障がいのある子どもによって様々な能力バランスの特徴がありますので、傷つき方は様々です。たとえば聴覚系が過敏な発達障がいのある子どもに対して、部活の先輩が数人で取り囲んで大声で怒鳴って指導する事態が発生したとします。先輩方は良かれと思ってとった行動が、聴覚過敏の子どもにとっては地獄を経験したに等しい最悪の体験となりトラウマになりえます。こうした出来事を機に学校に行けなくなった発達障がいの子どもがいました。先輩方にとっては、後輩を熱心に指導しただけのことで何も悪気があったわけでもありません。しかし発達障がいがあり聴覚過敏の子どもにとっては、人生で最悪の恐怖体験になります。以来学校に行くたびに完全に足がすくみ、この場面がフラッシュバックしたり、遠くの教室で先生が大声で指導している声が聞こえただけで、固まってしまう身体反応が起こって教室に入れなくなる事態が発生します。そのたびに「私は役に立たない」「私はダメ人間だ」「私は要らない」という否定的な自己認知が頭の中に溢れてきます。教室に入りたくても入れない状態を繰り返す中で、否定的な自己認知がどんどん強化されて苦しむようになっていきます。
トラウマが放置され、そのまま大人になっても自己否定の言葉や過去記憶の侵入体験に苦しみながら生きている方は多数おられると思います。こうした発達障がいにまつわるトラウマの問題は、EMDRを用いたカウンセリングを行うと解決を劇的にスピードアップできることがあります。

http://www.risorsa-emdr.com

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