過去のトラウマ的な経験が影響して生じる問題の一つにパニック障害があります。
息苦しさや胸の痛み、動悸、恐怖感、異常な発汗、吐き気や腹部の不快感、頭がカーっと熱くなる、身体や手足の震えなどが急にあらわれます。これがパニック発作です。死ぬのではないか、気が狂うのではないかと思う程度までいくのが特徴です。
通常パニック発作は10分以内で症状がピークに達し、そこからだんだんと症状が治まっていき、1時間以内には収まるのがほとんどです。
何回かパニック発作を経験された方は、「またパニック発作が起こったらどうしよう」と、パニック発作が起こることへの不安や恐怖が生じるようになります。これが「予期不安」と言われる症状です。パニック発作それ自体がトラウマ的な経験の一つになってしまっている方もおられます。
予期不安は、逃げ場のないような場所でのパニック発作や、発作を他人や大勢の人に見られることの恥ずかしさといった不安や恐怖を生み、大勢の人が集まる場所や、過去に発作を起こした場所を避けるようになります。これが、「広場恐怖(外出恐怖)」といわれます。
脳生理学の立場からは、パニック発作は脳幹の橋の近くにある青斑核の誤作動が起こっている状態とする仮説が出ています。
パニック障害の方が心療内科を受診されますと、心療内科の治療では抗不安薬と抗うつ剤のSSRI、睡眠導入剤などを併用した薬物療法が一般的に用いられます。SSRIを用いた薬物療法は、飲み始めて効果が現れるまで数週間かかり、人によっては効果が現れるまでの間、強い副作用に苦しまれる場合もあります。SSRIの副作用に耐えられなくなってSSRIの薬物治療からドロップアウトされた方や、薬の量が増えていくのが怖くなってEMDR治療を求めてこられる方が時々おられます。
パニック障害の方にEMDRを行うときは、MDRの標準的な手続きに入る前に、軽いトランス誘導を行うなどの方法を用いて、身体反応を少し穏やかに感じられるようにする工夫が必要な場合もあります。