熊本地震の被害に遭われたすべての方に、お見舞い申し上げます。
被災者の方々には、様々なトラウマ性の反応(外傷後ストレス反応)が生じるでしょう。しかしそれは一方で、外傷的な場面で本能的に身を守るために必要な自然な反応でもあります。
被災者の方はトラウマから立ち直る自然回復力や復元力(レジリエンス)を持っておられます。それゆえに医療機関や専門機関でケアを受けることなく自然に回復して行かれる方も少なくありません。
被災された状況によっては、自身の生命の危険を感じるような体験や、悲惨な光景を目撃したり、身近な人との突然の死別を経験されたりすると、深刻なストレス反応を示される可能性が高まります。そしてそのストレス反応の代表的なものが心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。
それ以外にもアルコール依存、うつ病、認知症などの治療中の方は、もともと患っておられる疾患の悪化やそれによる生活上の障害が発生するかもしれません。発達障害をお持ちの方は、行動や情動のコントロールが悪化する場合があります。このような方の場合は、精神科や心療内科での薬物療法や心理療法が有効と考えられています。EMDRは、この心理療法の中の一つの手法になります。
トラウマ反応に関する心理教育や支持的なカウンセリングが有効な場合もあります。災害後に従来行われる行政やNPO団体などが実施する電話相談が手助けになる方もおられます。もともと地域に根付いている自助的活動など地域に根差したケアも回復には非常に有効です。
災害時のトラウマケアは包括的な視点を持ち、被災者の方の個に応じた適切な臨床的な対応と、被災したコミュニティの中にある、回復の手助けになる資源(リソース)につながっていけるよう援助することが一方で不可欠であると考えています。