連日のように、埼玉の女子中学生拉致監禁事件(誘拐事件)が報じられています。
報道を見ていますと、事件の悪質さや犯人の非人間的な行為をバッシングする意図をもって、「このような境遇によって生じた被害者の心の傷は一生消えない」というようなコメントをされるコメンテーターの言葉が目に付きます。
確かに奪われた時間は残念ながら返ってきません。そういう意味で、犯人の行なった行為は許せないものです。しかし「被害者の心の傷は一生消えない」は言い過ぎです。人間の脳には心の傷(トラウマ)を克服する力があります。適切な心理療法さえ受ければ、十分にトラウマは克服できます。「監禁されていた」「誘拐された」という事実やその当時の記憶は残りはしても、当時のことを振り返って「ああ、そういうこともあったね」くらいに「過去のこと」を過去のことにしていくことはできます。決して一生消えないものではありません。
公共の電波を通じて影響力のあるコメンテーターが発した発言を、被害者の方がテレビを通じてもし耳に入れいたら、コメンテーターの言葉が暗示として作用して「私の心の傷は一生消えない」という思い込みを作ってしまうかもしれません。そんなことはないのです。適切で専門的な手助けさえあれば、過去のトラウマは完全に過去のことにしていけるくらい人間の脳は優れた力を持っています。被害者の方が適切な心のケアを受けられることを願ってやみません。